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ART & CULTURE

抽象アートの魅力

一枚の絵を見て、何が描かれているのかは分からないけれど、なぜか空間が豊かになる。そんな抽象アートの魅力について考えてみましょう。

大きな窓から光が差し込むリビング。暖炉の上に黒とアイボリーの抽象アートを飾り、黄土色のソファとバーガンディのランプを合わせた空間

言葉になる前の感覚に触れる

抽象アートとの出会いは、そんな小さな感覚から始まります。作品の意味を説明できなくても、すでに私たちは、その絵の何かを受け取っています。

この、言葉になる前の感覚に触れられること。そして、見る人それぞれの経験や想像が入り込む余地があること。そこに、抽象アートの魅力があります。

具体と抽象を行き来する、私たちのまなざし

具体的な対象がはっきり描かれていない絵を、私たちはどのように見ているのでしょうか。

日常でも、私たちは具体的なものから特徴を取り出して考えています。形も素材も違う椅子を、同じ「椅子」として理解する。ある風景を思い出すとき、建物の細部よりも、夕方の赤い光や、遠くまで続く水平線が印象に残っている。目の前の情報をすべて同じように扱うのではなく、何かに注目し、関係を見いだしています。

美術鑑賞の心理学研究にも、すぐに意味が定まらないことが、関心につながる可能性を示すものがあります。マグリットの作品画像を使った実験では、曖昧さのある画像は、分かりやすく加工した画像より理解しにくいと評価されながら、一部の条件では、より興味深く、好ましく受け取られました。抽象画そのものを対象にした実験ではありませんが、作品を味わううえで「分かりやすさ」だけが価値ではないことを考える手がかりになります。Jakeschほか「Image Ambiguity and Fluency」 ↗ 外部・別タブ

暮らしの中で、繰り返し出会う楽しみ

同じ作品でも、朝の自然光と夜の照明では、色や陰影の印象が変わります。遠くからは大きな形の釣り合いを楽しみ、近づいて線の揺らぎや色の重なりに気づく。暮らしの中に置くことで、美術館で一度見るときとは違う、繰り返し出会う楽しみが育っていきます。

作品を選ぶ入口は、「この色が好き」「この形が気になる」という感覚で十分です。しばらく眺めて、どこに目が戻るのか、どんな場所に飾りたくなるのかを考えてみる。その小さな関心が、自分にとって大切な一枚を見つける手がかりになります。

いつもの部屋で、ふと視線を上げる。そのたびに、少し違うところが目に留まる。

抽象アートは、そんな日々の見方に、静かな変化をもたらしてくれます。

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